(番外編:99年秋・北海道)
地図データは「MapFan II 日本地図全国版 for Microsoft Office 97 Personal Business Edition」に収録のデータを使用しております。
 MapFan II 日本地図全国版 for Microsoft Office 97 Personal Business Edition (C)インクリメントP(株)/(財)日本デジタル道路地図協会/北海道地図(株)


 以前から、23日と24日に旅行をすると公表してたんですが、行ってきました。遠い所へ。
 たった二日で「北海道」です。なぜに、また。とお思いになられるかとは思いますが、これには深い訳があるんです。関東の方から見る北海道がどれほど遠いイメージがあるのかは知りませんが、関西の人間からすると、北海道というのは、それはそれは遠いイメージがあるんです。ですから、1泊2日で行くなど、「もったいない」んですね。
実際、格安チケットなどを使えば、韓国の方が安かったりしますから、ビジネスでもない限りは、最低でも3泊くらいはしたいところなんです。
 では、なぜに、こんな無謀なことをするのか、といえば、往復の航空券がタダだったからなんです。
 タネをあかせば、利用したのがJALのマイレージバンク。これは皆さんもよくご存知だと思いますので、詳しい解説は省略しますが、その貯えが18,000マイルを超えており、しかも、使用期限が今年の年末と差し迫っていたんです。なんとかしなきゃ、と思ったのが9月のこと。で、僕の好きな北海道へ行こう、と思ったのもつかの間、大阪−千歳間の往復航空券と引き換えができるのが20,000マイルからで、若干足りなかったんですね。
 でも、15,000マイルまでで行ける、東北、九州は僕の心の中で「何かものたりない」場所だったんです。ですから、やっぱり北海道へ行こう、と。
 15,000マイルで行ける最北点、仙台からでも、北海道はまだまだ遠いですよね。JRで500km以上ありますから。そこで、視点を変えて発地点まで別な手段で行けばいいのでは、と考えて白羽の矢が立ったのが、名古屋空港。ここからなら15,000マイルで千歳までの往復航空券をGETできます。おまけに、大阪からの距離もさほど遠くはなく、クルマでも3時間ほどで着きそうです。
 よし、これだ。とばかりに、予約の電話を入れたのが9月の末のこと。しかし、ここで思わぬプレゼントを手にしたんです。受付の女性が言うには、「まだ公表はしていないんですが」との前置きで、10月よりマイレージのキャンペーンが始まり、20,000マイル必要な区間が15,000マイルで引き換え可能だとのことなんです。つまり、大阪−千歳空港間の往復航空券が15,000マイルで手に入るわけです。で、予定変更。
 10月1日以降の予約分よりキャンペーンの適用となるようで、当然のごとく、10月9日出発の11日到着分はすでに満席。残念ながら年内にはもう連休はありません。そこで、かなりの強行となってしまったわけなんです。
 考えた挙げ句、10月23日の大阪(伊丹)空港発千歳空港行の朝便、24日の函館空後発関西空港行の夕方便の予約を入れたんです。

10月23日
 沿線の近鉄上本町駅から出る早朝の大阪国際空港行のバスに乗り、7時すぎに空港に到着。ただの(連休でもない)土曜日だというのに、空港は人であふれ、飛行機に乗る人でごった返してました。8時20分のフライトに余裕で間に合うだろうと、7時45分に手荷物検査の場所へ行けば、ずらーっと、検査待ちの列。ハイジャック事件の後、検査が厳しくなったのか、ただ単に客が多いだけなのか、並び始めてから検査を終わるまでに15分ほどかかっちゃいました。
 なんとか(というほどギリギリでもなかったんですが)搭乗時間に間に合い、ジェット機の中へ。が、定刻になっても動き出す気配はナシ。スチュワーデスのアナウンスによれば、手荷物検査の列のために、80人ほどが、いまだに機内に入っていないとのこと。案外、僕はまだ早かった方かも。
 結局、定刻よりも18分遅れで大阪国際空港を離陸。瞬く間に大阪の地を離れていきました。

 雲の上を暫し航行し、雲間が切れてきたころに右手下には、十和田湖がクッキリと姿を現しました。そして、ほどなく津軽海峡が眼下に現れます。千歳空港もすぐ近くです。

 着陸し、ブリッジに一歩足を踏み入れると、さすがは北海道。ひんやりとした冷気が体を包みました。荷物を受け取り、JRの新千歳空港駅へ。
 残念ながら小樽への直通快速は数分前に出たばかりで、次の直通は約1時間後。待つ理由もないので、次の札幌行快速エアポートに乗車。札幌から小樽経由長万部行の快速マリンライナーに乗り換え。快速って言うので、立派な車両を、というか、少なくとも6両編成くらいの列車だと勝手に想像してたんですが、やってきたのは2両編成のローカル列車。およそ札幌駅の高架ホームとは似つかわしくないスタイルで、行列を成して待っていた乗客を乗せきると、はや満員です。他の小樽行快速は4両はあり、ここまですし詰めにはならないかと思うんですが、この列車、非電化区間の長万部まで直通するため、ディーゼルカーで、しかもローカル区間を走るんで、たったの2両なんです。小樽までは4両で、そこで2両を切り離す、なんていう運用を望みたいところですが、たかが30分。我慢しろということなんでしょうか。

 小樽に近づくにつれ、雨がぱらつき出し、駅を降りるとしとしとと雨が落ちてます。こんなこともあろうかと、今朝出発間際にバッグに放り込んだ折り畳み傘を開けば、糸が切れて使い物にならない傘だったんです。入れる傘を間違えてました。
 雨に打たれながら考えたんですが、今までの経験から、「傘を買えば雨が止み、我慢すれば降り続く」だろう、と。で、コンビニへ。一番安いビニール傘を買いました。でも、結局無駄にはならなかったんで、よかったんだか、悪かったんだか。
 海岸へと向かって歩くとほどなく、有名な運河に到着します。雨の小樽運河は初めてで、なかなか感傷的ではありますが、同時に寒さも込み上げてきました。現在6度。雨に濡れる手が痛く、手袋が欲しいくらいです。
 海岸の通りから少し内側を歩けば、両側にお土産物店などが並ぶ通りがあり、そこをずーっと歩けば北一硝子、さらに歩くと小樽オルゴール堂が見えてきます。両方の店に入り、ガラス細工やオルゴールを眺めてると、日常生活の喧燥が彼方に乖離していくようです。
 小樽での締めくくりは、小樽市立博物館。小樽市の発展の様子と漁によって栄えていく様子を細かく展示してあります。もと鉄道オタクだった僕には、現在の小樽駅と、廃止された手稲駅、函館本線が山側へ伸びていく様子のあたりが興味深かったですね。で、ここまでが、一つ目の展示室。二つ目の展示室は、ぐっと時代を遡って、古代の様子となります。小樽周辺で見られる野生の動物や、縄文時代の生活などの展示があります。その中に、火起こしの体験コーナーがあって、木片を上下に動かすことで軸となる棒が回転し、摩擦熱が発生して発火するというものなんですが、室内ということもあって、実際に火をおこすのではなく、発火部分の温度がデジタルで表示される仕掛けになってました。で、ちょっと挑戦。1分経っても発火温度に到達しません。っていうか、何度で発火するのかも判らず、諦めました。昔の人は大変ですね。
 小樽駅に戻り、快速で札幌へ。

 夕方の5時前に、駅の建物から外に出れば、すでに真っ暗だったんです。とうに7時は過ぎてそうな雰囲気です。その闇の中を歩いて、まずは、大通公園へ。数百メートルにわたって続く公園で、冬には札幌雪まつりが開催される会場として有名です。その端にあるテレビ塔に映し出されたデジタルの時計の時刻は5時20分。見事に闇の中です。
 少し西へ歩いて北に向かうと、時計台があります。前に見た時よりも綺麗になっており、記念撮影用の踏み台までありました。以前にも増して観光スポット化されてますね。でも、時計台の屋根近くの赤い星のペイントを見れば、あぁ、札幌に来たんだ、感じます。時計台を見るのも今回で5度目。高校生の時に1回、大学時代に3回、そして社会人となった今回で5度目となります。それこそ次はいつ訪問できるか判らないだけに、感慨深いものがあります。
 さらに西へと歩けば赤レンガの北海道庁旧本庁舎があり、こちらもライトアップされてるんですが、こちらの方は、観光客の姿はまばらです。まぁ、まっとうな観光客なら、日のあるうちに来るでしょうからね。

 時間が時間だけに、行動範囲も限られ、大通公園近くの大手電器店で時間をつぶした後、目指すラーメン屋へ。
 最近、ラーメン横丁も、観光客が行き過ぎて、味が落ちたという声も聞かれますが、僕が向かったのは、すすきのに程近い、「起平」さんというラーメン屋です。狸小路の中の雑居ビルの地下1階にあるこのお店、入った時はカウンターに2人、テーブル席に2人の計4人のお客さんだけだったのが、僕が注文して程なく、テーブル席は全部埋まり、店の中にも外にも待つ人まで現れたんです。さすがはおいしい店と紹介されただけのことはあります。まぁ、僕もガイドブックを見てやってきた人間だけに、偉そうなことは言えないですが、肝心の味の方はというと、赤味噌と白味噌をブレンドしたというスープがとても美味しく、最後の一滴まで、飲み干しました。もちろん、ハンカチは汗でびっしょりです。
 店を出ると夜風が心地よく(本当は寒いくらいなんでしょうが、火照った体にはちょうどいいんです)、札幌駅までの道のりが、気持ちよかったです。

 9時を過ぎ、どこへも行くことができなくなって、待合室で時間をつぶし、11時前にホームへ。背後には釧路行の「特急おおぞら」が、線路越しの向かいのホームには網走行の「特急オホーツク」が停車しており、ディーゼル特有の騒音と排気ガスを撒き散らしてますが、周囲に電化区間が発達している大阪に住んでいると、この雰囲気が懐かしくも感じられます。
 で、11時ちょうどに両列車が発車していき、ホームにはひとときの静寂が訪れます。次に来るのが、乗車する23時30分発の「快速ミッドナイト」函館行です。
 全車とも(とはいっても2両編成なんですが)座席指定のこの列車に、30分以上も前から並ぶのは妙な感じがするかもしれませんが、この列車は妙な車両を連結してるんです。その名もカーペットカー。座席を取っ払って、一段高くした床にカーペットを敷いてしまった風変わりな車両です。ちょうど、フェリーの2等席なんかを想像していただければいいかと思います。あんな感じです。
 ですから、指定席といえども、決まっているのは「定員」だけ。場所は各自で確保しなくちゃダメなんです。毛布が敷かれていて、その一つに腰を下ろすと、隣のおじさんとの間隔が妙に狭いことに気になること以外は、特に不満もありません。札幌を出ると、数分後に新札幌駅に停車し、そこを出れば、次は終点の函館駅です。

10月24日
 真夜中に目を覚ませば、カーテンの奥に駅のホームが見えました。長万部駅に停車してるようです。新札幌〜函館間をノンストップというのは、あくまでも客扱いの話で、実際には複数の駅に停車し、時間調整をしてるんです。だって、特急スーパー北斗が2時間59分で走ってしまう区間を、7時間かけて走るんですからね。

 新札幌を出て以来なかった車内放送が、次にかかったのが、お目覚めコール。函館まであと10分という放送です。固い床にカーペットを敷いた上に、薄い敷布団と毛布をかけただけだったんで、なんとなく腰に疲れが残ってますが、寝台車ではなく、座席指定料金の300円だけで、横になって移動できるんですから、やっぱり安いモンです。夜行バスにしようかと思ったんですが、この魅力には勝てませんでしたね。
 早朝の函館駅に到着し、荷物をロッカーに放り込んでから向かったのは、もちろん函館朝市。新鮮な魚介類や茹でたてのカニが所狭しと並べられています。その店の間をすり抜けて、見つけたのが、「きくよ食堂」さん。5年前にもお伺いした店で、マスコミにもよく知られた有名なお店です。でも、かなり雰囲気が変わっていて、聞けば、今年に入って改築したのだとか。でも、ウニ、イクラ、ホタテがふんだんにのった「巴(ともえ)丼」のネタの量は、十分に満足するもので、いい意味で、変わっておらず、安心しました。
 食べ終わってレジに向かえば、狭い空間にカウンター席があり、その端にレジが置かれてました。裏手に見えたこの場所こそが、5年前に僕が食事をした場所です。この懐かしい話を少しばかりして、店を後にしました。
 駅を出て南西へ歩くと赤レンガの倉庫群が見えてきます。現在は、内部を改装して、この倉庫群がショッピングゾーンに変身していますが、開店時間前なんで、素通りしました。
 そこから西へ向かえば、やや町並みから外れたところに外人墓地があります。遥かなる国、ニッポンで命を落とした異邦人が港を眺めるこの地に眠られています。
 ここから、函館山ロープウェイの山麓駅までの間には、洋館が立ち並ぶ通りがあり、大自然北海道、とはまた違う、エキゾチックな雰囲気をかもし出しています。
 木造2階建てのコロニアル建築の旧函館区公会堂、ビザンチン様式の函館ハリストス正教会、ゴシック様式のカトリック元町教会、聖ヨハネ協会など、函館らしさが凝縮されたエリアです。その途中にはドラマやCMなんかでもよく目にする八幡坂があり、坂道の先に港の見える美しい風景を、見ることが出来ます。
 坂といえば、ここ函館にしろ、神戸にしろ、長崎にしろ、異国文化が見事に調和してますよね。もちろん、今年のゴールデンウィークに遊びに行った広島県の尾道のように、日本独特の文化で映える坂道もあります。島国日本には美しい坂がよく似合う、ということなんでしょうか。
 ロープウェイのルートの下をくぐって山道を歩きつづければ、海の見える頃、立待岬が見えてきます。津軽海峡を挟んで30kmほど先には青森県下北半島があるはずです。岬だけあり、風が強く、時折寒くも感じます。
 ここからしばらく歩いて、市電沿いに十字街に戻り、再び赤レンガ倉庫群へ。ここで土産物を買ったり、函館の地ビールを片手に昼食を取ったりと、函館観光の最後を楽しみました。とはいえ、ひとつだけ心残りがあったので、空港へ向かう前に、立ち寄った場所があります。
 函館駅のすぐ近くにある、「メモリアルシップ摩周丸」です。青函トンネルの開通と共に現役を退いた青函連絡船のうちの一隻「摩周丸」が、函館港に係留されており、船内には、連絡船の歴史や、当時を思い出させる数々の品が展示されています。もっと時間を取りたかったんですが、仕方がないですね。いつか、もっとゆっくりと見たいところです。
 駅に戻って、安いからと空港行きの函館市営バスに乗れば、これは大失敗。空港連絡バスに乗れば20分で着くところが、30分たっても着く様子がないんです。各停留所に停車する路線バスですからね。
 これが原因か、空港でチェックインするときにはすでに窓側の席は全てなくなっており、通路側(2-3-2の真ん中3の右側)の席になってしまいました。搭乗手続きを済ませて搭乗口へ向かえば、ほどなく搭乗が開始されたので、やっぱり遅かったようです。

 16時05分、定刻に離陸です。短かった1泊2日の北海道旅行も、これで終わり。明日から、また通常の業務が始まります。なんだか、寂しいですね。
 ところで、僕の席は14Gだったんですが、ここで、不思議なことが起こったんです。前列の窓側、13Kが空席なんです。とはいえ、勝手に乗り移ることも出来ないんで、空席のまま、離陸の時間を迎えてしまったんですが、なんとなく気になります。
 ドリンクのサービスもひと段落を迎えた頃、ちょうど新潟上空あたりを飛行中だったでしょうか、シートから立ち上がって、スーパーシートの席の間を歩いてチーフパーサーの元へと向かったんです。
 で、13Kが空席であること、窓側が希望だったことを説明していると、この席は、事前予約の対象席で、結局搭乗されなかった、ということだったらしいんです。そこで、今からでいいので席を替われないかと相談を持ちかけたところ、意外にも、即、承諾を頂いたんです。シート毎に乗客を管理しているので、断られるのかと思ってたんですけどね。おまけに、申し訳なさそうにしていただいたんで、こちらも恐縮してしまいました。なぜ申し訳なさそうなのかというと、搭乗前に、もう一度、キャンセルの確認をしていただければ、その時点で交換が可能であったとの事なんです。なんとなく、これも意外でした。
 さっそく席を移ると、通路側の乗客からの、羨望の眼差しを集めてしまったんです。考えることは同じ、だったんでしょう。行動を起こすか、起こさないかの違いですね。でも、窓の外を眺めれば、いい歳をして通勤電車のロングシートに、両肘をついて窓の外を眺めているような気分になってしまったのも、事実です。

 それだけで終わらないのが日本航空のサービスなんでしょうか。しばらく航行を続けてから、件のチーフパーサーがシートのところまで来られて、ご機嫌伺いまでされたんです。なんだか、第一級のクレーム客扱いのようですが、この心遣いは嬉しいですね。
 丹後半島あたりで日が沈み、しばらく行くと瀬戸大橋と島影が眼下に広がります。淡路島、和歌山上空を経由し、関西空港もまもなくです。
 定刻に着陸し、ほとんどの客が降りきるのを待ってから、シートを離れました。最後にもう一度、お礼を言うために。

 函館空港まで着ていたコートは、手荷物の中に押し込んで、ブリッジをわたりました。空港ビルに入ると、関西の暖かさが広がっていました。
 さぁ、明日からの仕事のため、家路を急ぐとしましょうか。

戻る