キャバリエ行動記録(2003年11月から12月まで)

12月31日(水) 走行距離 7.7km 総走行距離 68783.9km
 いよいよ今日で2003年も終わりですね。
 今年1年の汚れを落としてやろうと、最後の洗車に出かけました。ちなみに、土曜日の仕事納めの後、今日も含めて風邪気味で、運転どころじゃなかったんですね。ですから、今日、何とかスタンドに連れてくることが出来て、良かったと思います。
 大阪は終日雨模様だったんですが、せめて年越しはきれいな方が良かろうと、機械洗車+手がけワックスで丁寧に仕上げてもらいました。
 
 というわけで、2003年の閉幕です。
 この1年間の走行距離は5,550.1km。毎年定例の表現で、JR大阪環状線で255と3/4周です。東京-大阪がJR東海道線で556.4kmですから、ほぼ5往復ですね。
 今年は1年の2/3にあたる8ヶ月間が名古屋でしたから、5,000kmというのは、ある意味走り過ぎなのかもしれませんが、過去を振り返ると年間走行距離ではもちろん最少です。来年も前半は大阪と名古屋を行き来しそうな雰囲気ですから、走行距離は伸びないかもしれませんが、大事に乗ってあげたいですね。
 今年で3回目の車検を受けましたので、すでに8年目に入ってますから。
 
 来年も、いい年にしたいものです。
 この1年、ありがとうございました。来年も、よろしくお願いします。


12月 7日() 走行距離 193.7km 総走行距離 68776.2km
 オフ会です。師走です。というわけで忘年会オフです。もう忘年会シーズンなんですね。
 昨日も大学時代のクラブの後輩との忘年会を梅田でやって終電で帰ってきたんですが、仮眠程度の睡眠を取って今朝は7時過ぎに出発です。
 距離もあるんで、珍しく高速道路で行こうかなぁと会場の和歌山マリーナシティを目指して駐車場を発進しました。
 
 中央環状線を南へと走り、松原を過ぎ、そのまま堺方面へと走らせます。ここまで一般道で来ちゃったんで堺インターから阪和道に入ろうかなぁ、と思ったんですが、なんとなく泉北高速沿いに和泉市へと入り、そのままなんとなく大阪外環状線へと入りました。ここまで来てしまうと流れは結構順調ですから、岸和田を過ぎ、貝塚市へ。大人なんだから高速で行こう、という朝の決心もどこへやら、結局は貝塚インターから先だけでしたね。そのインター手前のスタンドで、セルフ洗車。水垢は取る時間が無かったんで300円が有効だったか無駄だったかは微妙なところですが、気分的には「前よりマシ」ですから、意気揚々と阪和道へ。
 3年前の関西オフでakiracchiさんを待った紀ノ川SAでしばし休憩し、海南東インターを下ります。
 3年前のオフを思い出させる、懐かしい細い道を走り、いよいよマリーナシティへ。
 大きな橋を渡り、左に曲がれば集合場所に近い第2駐車場、という交差点で信号待ちをしてると、右手に黄色いキャバリエが見えました。ご存知Jさんキャバですが、右折して(つまりは僕の側からすれば直進です)駐車場から離れていきます。
 まぁ、幹事さんだし、ネタの仕込みかなぁ、というくらいの気持ちで左折し、第2駐車場へ。フェンス越しに、Y2K白クーペが見え、その中でともさんが手招きをしてるのが見えました。

 (以下はオフ会レポートをお楽しみ下さい)

 マリーナシティの第2駐車場を、LD-9さんに追従するような感じで出発しました。
 海南市の中心部で、右へ行けば阪和道・海南インターという標識が見えたんですね。そしたら、前を走る9さんが右折して行ったんです。海南インターといえば、海南東インターよりも大阪から遠いので、いわば遠回りとなります。で、気になって9さんに電話を入れてみたんです。
 結果的には9さんの選択が正しかったのかもしれませんね。海南までは幅の広い道が続いていて、なおかつ、東との差が200円程度なんで、こちらに来た、とのこと。判ってらっしゃるなら問題ないんです。僕はカーナビの指示通り、東インターへと向かいますが、確かに対向もままならない細い道ですから、海南へ走った方が早かったかもしれないです。

 今日中に名古屋へ帰るというスケジュールじゃなければ一般道を走ったのかもしれないですが、さすがに僕も時間の読めない一般道を走る勇気は無く、近畿道の長原インターまで高速に乗りました。
 海南東インターでも、岸和田料金所でもETCは威力を発揮してくれたんですが、堺料金所はナメてますね。あの並び方は訳が判りません。
 右から2つ目だったかのゲートがETC専用レーンだったんですが、左の方から続く車の列が、1番右のレーンへ合流をかけているんです。つまり、追い越し車線からスムーズにETC専用レーンに入れない、ってことです(なぜ、追い越し車線を走っていたか、は別問題で…)。
 左からつながる列を横断しようと左折ウインカーを点して後方を確認すれば、料金所待ちの渋滞の列に9さんを見つけました。
 あれれ?と思いながらも寄って行くわけにもいかず、そのままETCレーンをノンストップで通過しました。えぇ、ちょっと自慢げです(笑)。
 案の定、9さんから携帯に電話が。「もぉ、リーダー。サービスエリアで○○してる間に、追い抜いてぇ」と。確かに、タイミング的にはETCがあるかないかに関わらず、僕の方が前だったようですね。「あ、もうすぐフェラーリがそっちに行くよ」と。そばにパトカーが来たからとかで電話はそこで中断したんですが、その直後、怒涛の勢いでフェラーリが追い越し車線を駆け抜けていきました(笑)
 
 予定通り、松原ジャンクションを越え、長原インターで近畿道から下りて、東大阪へと戻ってきました。
 今回のオフは「いつも通りのいつものメンバー」に加え、初参加の方々もいらっしゃって、とても楽しかったです。やっぱり、来て良かったですね。今年の公式オフはこれで打ち止めですが、また来年も色々なイベントがあると思いますので、ぜひ、皆様もご参加を。お待ちいたしております。


12月 5日(金) 走行距離 187.1km 総走行距離 68582.5km
 名古屋駅から歩いて15分とかからない場所にあるのに、1時間100円、しかも入庫24時間以内で800円という格安の駐車場に停めてたんです。火曜日の夜から入ったんで、2,400円を支払って駐車場を出ます。
 が…。エンジンのかかりが悪かったんですね。去年の10月以降、乗らない日が多くて、バッテリーがかなりくたばってたのは事実ですから、ヤバいなぁとは思ってたんですが、とりあえずかかりさえすればオルタネータが働くんで、大阪までは戻れるだろう、と踏んだんです。
 アクセルをふかし気味にセルを回して、何度目かのトライでエンジン始動。まぁ、なんとかなるでしょう…。

 今日は大阪に戻る前に、岐阜のSAKIくんところへ寄る予定なんです。ノートPCに搭載していたハードディスクをチェックして欲しい、ということで、そのブツを預かるために。エンジンさえ止めなければ大丈夫だ、と言い聞かせながら旧22号線を北へと走ってたんです。名古屋市西区から西枇杷島町へと渡る橋の上で、悲劇が訪れました。
 渋滞気味だったんです。出光のガソリンスタンドを探して22号線を走るために右折しようと右側車線を走ってたんです。ここは完全な片側2車線ではなく、乗用車ならかろうじて並べる程度の幅なんですが、そのセンターライン寄りを走ってたんです。そして、エンジンが止まったんです…。突然に。無情にも。
 焦りましたよ。かなりね。とりあえず、落ち着け、とハザードを灯してみて、それからセルを回します。バッテリーの警告と、『アラジン』に出てくるような、魔法のランプの警告サインが赤々と光ってます。走ってるのにバッテリー切れ? 動揺はしたものの、冷静に携帯電話を取り出し、JAFへと電話をしてみました。
 一通り状況を説明すると
「通行の妨げにはなってませんか?」
「…あ…。けっこう邪魔です。」
 後ろに、名鉄の観光バスが接近してます。乗用車は車線を変更して左側をすり抜けてくれていたんですが、さすがに大型バスは無理です。万事休す。
 でも、このバスの運転士、かなりのベテランさんなんでしょうね。クラクション一つ鳴らさず、対向車線が赤信号で止まるのを待ってから「反対車線を走って」避けてくれました。
 電話をしながらも何度となくセルを回してると、弱々しいながらもエンジンがかかったんです。で、一旦電話を切り、数十メートル前進して、左に寄せて停めることが出来ました。そこで改めてJAFに電話。
 対応した係員曰く「オルタネータが働いてないようですね」。やっぱり…。
 
 係員が駆けつけても「必ず直る(応急処置でとりあえず動く)という保証は無い」とのこと。とりあえず応援を頼んでから、半ば諦め気分でJさんに電話をしてみました。
「オルタネータが死んでそうですね」
 やっぱりプロは違いますね。で、その後に続いた言葉に驚きと感謝の気持ちが溢れました。
「今から向かいますよ、そちらに。えぇ、積車で」
 名古屋にキャバリエを放っておくわけにもいかず、大阪(大阪市東住吉区)まで、運搬してもらえるのは、この上ない喜びです。

 その後、自宅に「帰れないかも」という電話を入れたり、SAKIくんの携帯へ事情を説明したり。
 で、30分ほどが経過し、黄色のパトライトを点灯させたJAFの作業車が到着しました。
 慣れた手つきでセルを回し、警告灯を確認し、エンジンルームをチェックします。数分後、
「エンジンまで、燃料が届いてませんね」
 と。
「はい?」
 少量の代用燃料(スプレー缶だったんですが、何なんでしょう…)を吸入し、「試しにエンジンをかけてもらえますか?」と。
 …。エンジンが始動しました。で、すぐに停止。
「どうですか?」
「えぇ、ガソリンが来てないようです」
「というと…?」
「…俗に言う、『ガス欠』ですね」
「…」
「10リッターだけ、入れてみましょうか」
 え?ガス欠? 燃料ゲージは最後のメモリにまだ届いておらず、当然、チェックランプも点いてません。やや放心状態になったところへ、JAFの隊員が、「実はここへ来る前にガス欠での要請があって、使っちゃったんですね。ちょっと、買ってきますから、待っててもらえますか?」と。
 JAFカーが出て行ったところで、Jさんに電話。
「ちょうど今、積車に乗り換えたところです。今から行きますね」
 との返事だったんで、ちょっと待機してもらいました。
 
 戻ってきたJAF隊員から10Lの燃料補給を受け、セルを回せば…。
 快調ですね。何事も無かったかのように回りました。
 念のために聞いてみました。
「このまま、大阪まで走っても問題ないですよね」
 そしたら、
「えぇ、全然問題ないですよ。給油さえしてもらえれば」
 と。
 オチが着いたところでガソリン代を支払い、撤収です。
 急いでJさんに電話。お騒がせしてスミマセンでした。

 その後、清洲町のコンビニ前でSAKIくんと合流し、用事を完了。10分ほど談笑して、それぞれに別れました。その後、1号線に出て、佐屋町の出光スタンドで満タンにして、長島から東名阪道に入ります。さすがにもう時間も遅いですからね。
 亀山付近での工事渋滞があったものの、名阪国道は順調に流れ、天理から奈良市内、阪奈道路も問題は無く、日付が変わって少しした頃に自宅に「無事」到着です。
 何ともお騒がせな数時間でしたが、燃料ゲージ(フロート部分?)の不具合程度で良かったです。オルタネータの修理だと想定外の出費ですからね。
 というわけで、燃料ゲージを過信せず、定期的な給油を心がけましょう。その方が、「恥ずかしい思い」をしなくて済みますから(笑)


12月 2日(火) 走行距離 184.1km 総走行距離 68395.4km
 今日は平日ですが、会社の設立記念日ということもあって「今年は」休みです。日曜日だった一昨年はともかく、去年は普通の出勤日だったんですが…(笑)
 とはいえ、今日は半分お仕事。名古屋出張のための引越しです。
 前夜までにまとめておいた荷物を、リアシートを倒したキャバリエに詰め込み、いざ出発。11時のことでした。
 阪奈道路から24号バイパスへ入るのは、いつものパターンですね。天理まで出て、そこから名阪国道へ。かなり順調に走ったように思うのですが、やはり天理までの時間がいつもよりもかかってますね。なんせ、平日の昼間ですから。
 名古屋のマンスリーマンションとは、午後2時過ぎに鍵をもらう約束をしていたということもあり、亀山からは東名阪道を走りました。途中、御在所SAで小休止を挟んだものの、なんとか2時を少し過ぎた頃に名古屋駅近くのマンションへと到着できました。嬉しいことに、過去2回お世話になったのと同じマンションですから、管理人さんにも顔を覚えて頂いてました。鍵を受け取って、さっそく荷物を部屋へと放り込みます。
 すぐそばにパトカーが止まって、路上駐車をしている軽自動車をレッカー移動させていましたから、ハザードを焚いて引越し作業中とはいえ、ヒヤヒヤしながら時間と闘ってましたね。何往復かで全ての荷物を運び終え、とりあえずマンション前から離れます。
 
 その後はホームセンターで出張中に必要な生活用品を買ったり、スーパーや100円ショップで買い物したり。久しぶりのスーパーでは、ついつい楽しくて、いろいろ買っちゃいました。週末には一旦大阪に戻るというのに…(笑)
 夜に時間貸し駐車場へと入り、本日の行動は終わりです。

11月22日() 走行距離 147.2km 総走行距離 68091.6km
 3連休で彼女と2人、京都観光です。新幹線でやって来た彼女と京都駅で合流し、高雄へ。神護寺等を訪れました。(後日・詳細報告予定)

11月23日() 走行距離 70.3km 総走行距離 68161.9km
 秋の観光シーズン。京都市内は全国各地からの観光客でごった返してました。で、当然の結果、大渋滞。何時間クルマに乗ってんだか…(後日・詳細報告予定)

11月24日() 走行距離 49.4km 総走行距離 68211.3km
 昨日の反省を活かし、京都駅前の駐車場にキャバリエを預けて、徒歩にて観光。午後から雨が落ちてきましたが、秋の三十三間堂や清水寺は良かったですよ。
 夜の新幹線を見送って3連休も終わりです。(後日・詳細報告予定)



11月14日(金) 走行距離 280.4km 総走行距離 67575.2km
 四国の高松で行われる「讃岐うどんオフ」に参加すべく、高松への入口、瀬戸内海を挟んで対岸の岡山・宇野港まで移動です。(後日・詳細報告予定)

11月15日() 走行距離 125.6km 総走行距離 67700.8km
 宇野港からフェリーに乗り、高松へ。オフ会で本場の讃岐うどん食べまくりです。
 解散後、瀬戸大橋を渡り、倉敷市内で赤い1番さんと会食。深夜、岡山県内の健康ランドで仮眠を取りました。(後日・詳細報告予定)

11月16日() 走行距離 243.6km 総走行距離 67944.4km
 児島駅にキャバリエを停め、JRで高松へ。高松駅周辺の讃岐うどんを食べまくりです。二日続けて…(笑)
 児島駅に戻り、キャバリエで大阪へ戻りました。(後日・詳細報告予定)
 



11月 1日() 走行距離 124.5km 総走行距離 67045.3km
 今日から11月。絶好の行楽シーズンでもあるので、色付きかけた奈良・大和路を散策してきました。
 テーマは、お寺。仏像鑑賞好きの彼女に感化されたのか、お寺巡りの開始です。
 
 今日は佐保・佐紀路、明日2日は飛鳥路、明後日3日は斑鳩路と3日間の予定での訪問です。
 八王子を前夜に出発した夜行バスで到着した彼女との待ち合わせは、土曜日早朝7時30分の難波駅です。背負っていたリュックをキャバリエのリアシートに放り込んで、いざ出発。
 でも、まずは腹ごしらえ。中央大通を東へと走り、東大阪市の中ほどにあるマクドナルドで朝マック。今から回るルートを確認しながらホットケーキを口に運びます。好きなんですよね、コレ。朝からシロップのかけ過ぎ、という話もあるんですが…(笑)
 
 阪奈道路で生駒山を越え、一路奈良市内へ。JR関西線を高架で跨いですぐ、近鉄奈良駅の手前にある高天町の交差点を左折、北へ向かいます。1日目は佐保・佐紀路、と言ったものの、最初に向かうのは奈良市からややはずれた浄瑠璃寺です。行政区でいうと京都府の加茂町になるんですね。大阪に住む僕ですら浄瑠璃寺は奈良のお寺だと思ってました。エリア的には奈良でしょう。
 
 お寺のすぐ近くにある有料駐車場に車を停め、いくらかの土産物屋、食事処の並ぶ参道を歩いて山門をくぐると浄瑠璃寺の境内です。さっそく本堂へ。
 本堂に入ると、まず横一列に並ぶ9体の阿弥陀如来坐像(国宝)に圧倒されます。ツアー客のための解説がなされていたので、そばに座って一緒に聞いてました。中でも印象的だった話が、「本堂の奥行きの無さ」の理由です。確かに威圧感を感じるほどすぐ目の前に阿弥陀如来像が拝めるのに背後はわずかな空間を挟んで、板戸となっています。これは、本来、本堂の中から阿弥陀如来を拝むのではなく、本堂の目の前に広がる池の向こう側から拝むべきもの、なんだそうです。つまり、薬師如来のある三重塔側が「此岸」で本堂側が「彼岸」ということで、本堂の中で阿弥陀如来を拝むのは「『仏壇の中』に入って拝むようなもの」なんだそうですね。
 畏れ多くもすぐ目の前で拝めるのですから嬉しい限りです。
 
 でも…。今回浄瑠璃寺を訪れた目的は阿弥陀如来像ではないんです。阿弥陀様は年中いつでも拝めるんですが、この時期、特別に開扉されているのが秘仏・吉祥天女像(重文)のおられる厨子なんですね。
 仏像界ではナンバー1の美顔と言う人もいるくらいの吉祥天と、さっそくご対面。いいお顔です。
 次々と背後の観光客が入れ替わる中、彼女と2人してしばし眺めてました。確かに今まで見てきた他の寺の吉祥天とは風格が違うように感じます。
 そんなこともあって、他の重文、不動明王や地蔵菩薩像などをさらっと見たあと、吉祥天の写真を購入して本堂を出ました。
 
 境内を散策します。池を挟んで見る朱塗りの三重塔は秋が深まると紅葉と調和してたいそう美しいそうなんですが、今日はまだ2〜3割という感じでしょうか。それでも色付きかけた木々に三重塔は映えて見えました。
 
 浄瑠璃寺を出てキャバリエを停めたまま、少し周囲を歩きます。この辺りを当尾(とうの)と呼ぶそうなんですが石仏が点在し、歩くには面白いコースです。ただ、今日は他にも行きたいお寺がたくさんあるので、藪の中地蔵と烏の壷二尊を拝むだけで引き返しました。時間がたっぷりあれば岸船寺まで歩いても面白いでしょうね。
 道沿いにはあちこちに、当尾でとれた農産物が吊るされた無人の販売スタンドがあります。代金は備え付けの箱の中に入れてください、というものなんですが、柿や獅子唐の束などがあります。当尾はこのスタイルの発祥の地とも言われているだけに数もたくさんあり、冷やかしながら歩くのにも楽しいですね。
 
 キャバリエに乗り、奈良市内に戻って次に訪れたのが法華寺です。こちらも普段は非公開の秘仏・十一面観音立像(国宝)を拝むことが出来ます。本堂に入ると法華寺を紹介する案内のテープが流れ始めたんですが、2人は十一面観音の前に正座したまま、ずーっと見上げてました。蓮の茎を光背にしてるのも珍しいと思うんですが、唇に朱の残る穏やかな顔のこの観音様、彼女曰くは美人顔です。テープの案内が二順目に入った頃、彼女が小さな声で「どっちが綺麗?」と。「ん?」と考えたものの、僕の答えは「…吉祥天かな」(笑)
 本堂内の他の仏像、不動明王や獅子乗り文殊、幼少期の聖徳太子像などを見た後、もう一度十一面観音の前に。テープの案内も三順目が終わった頃、正座を解きました。本堂の入口で、尼さん手作りというお守り犬を眺めます。大・中・小の三種類あるんですが、彼女が欲しがっていた中サイズは既に売り切れとのこと。諦めて十一面の写真を買って本堂を出ました。
 
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   法華寺から車で走ること数分。次にやってきたのは秋篠寺です。
 10台ほどが停められる駐車場があるんですが、間が悪いというのか、空いていたスペースが黒塗りのベンツの横だったんです。当てないように慎重に駐車して車を降ります。
 
 境内に向かって歩いていると、彼女が突然、「あっ」と声を上げたんです。目の前には黒いスーツを着た老紳士と、同じく礼服の中年男性、それを取り囲むようにハイキング客の姿が。
「誰?」
「塩爺」
「…」
 あっ、こんなとこに(笑)。確かに目に前には塩川正十郎前財務大臣の姿が。同じ大阪13区の人間として不思議な親近感を感じながら門をくぐりました。
 
 国宝の本堂に入ります。
 ここにも多くの重文クラスの仏像が安置されてますが、彼女が真っ先に向かったのが伎芸天(重文)です。元は天平時代の仏像なんですが頸より下の体部を災禍により消失し、鎌倉時代に再現されたんだそうです。それからでも700年以上の歴史があるわけですから立派なものです。舞踊を習う彼女が真っ先に向かったように、この伎芸天は諸技諸芸祈願の信仰対象なんですね。普段、僕たちは仏像を芸術的センスでしか見ていないんですが、この時ばかりは違ってました。
 
 本堂内には他にも薬師如来(重文)、日光・月光菩薩(重文)、帝釈天(重文)などが目白押しです。
 本堂の片隅に追いやられている感のあるのが、五大力菩薩。憤怒の相らしいんですが、僕の目には5人揃ったお笑いグループに見えました。喋り系ではなくエンタテイメント系というのか何というのか…。面白い人たちです(いや、人じゃないか)
 
 これで本日のサブテーマ「美顔仏像」の拝観が終わりです。浄瑠璃寺の吉祥天、法華寺の十一面観音、秋篠寺の伎芸天。どの顔も印象的でした。
 
 次に向かったのが般若寺です。
 いくらか浄瑠璃寺方面へと戻る格好となるんですが、位置としては奈良県庁のほぼ真北でしょうか。
 般若寺は春の山吹、秋のコスモスなど花の寺として有名で、今の時期はコスモスが一面に咲き誇ってます。
 
 般若寺のシンボルともいえる十三重石塔(重文)を中心に、白や薄紫のコスモスが美しく広がっています。コスモスは秋桜ともいい、季語も秋ですから、「コスモス寺」として謳う般若寺は、秋以外にはどうなのかなぁ、と話していたんですが、コスモスの開花時期って案外と幅があるんですね。6月から11月となってます。4月には山吹ですから、「花の寺」に偽りはなしというところでしょうか。
 
 本堂の文殊菩薩騎獅像(重文)などを見た後、もう一度境内を歩きます。観音石仏が並んでいたり、夕日に映える石塔が見えたり。奈良の古寺めぐり、1日目の終了です。
 
 多くのお寺の拝観時間が4時台〜5時で終わってしまうので、時間を惜しんだため、昼食を取ってなかったんです。で、早めの夕食を取ろうと向かったのが、般若寺から県庁に向かって南に下ったところにある「天極堂奈良本店」です。
 奈良の名産品、吉野葛の製造販売店が開いた葛料理専門店で、ガイドブックで見つけて面白そうなんで飛び込んでみました。
 頼んだのが葛うどんセットと吉野うどんセット。うどんに葛を混ぜ込んだ麺は、独特のコシがあり、不思議な食感を楽しめました。吉野うどんは、うどんに葛あんをかけたもので、葛のとろみに身体が暖まります。下ろし生姜の風味も相俟って、美味しかったです。どちらの麺も美味しかったですよ。
 セットには他に胡麻豆腐、葛餅がついて、奈良名産ディナーを楽しめました。
 
 夕食が早かったこともあり、奈良タウンへ。北室町の通りに車を預け、餅飯殿(もちいどの)通りの「朱生」というお店へ。最近彼女がはまっているというアンティーク着物のお店です。着物が日常着だった古き良き時代のいい物が安価で提供されてます。その中でベストフィットなモノを探すのが楽しいんですよね。もっとも、なかなか着物姿を見ることは出来ないですけどね(笑)。
 
 大宮通を西へと直進して阪奈道路を走り、大阪に戻ってきました。


11月 2日() 走行距離 118.4km 総走行距離 67163.7km
 2日目の今日はメインを飛鳥路とし、周辺を巡ります。今日のサブテーマは「厩戸王子(聖徳太子)」です。何のことだか…、という方は山岸涼子さんの漫画『日出処の天子』をお読み下さい。30を過ぎた僕でもどっぷりとのめり込む事が出来た漫画です。
 というわけで、まずは天理市にある石上(いそのかみ)神宮へ。今回の旅行で唯一の神社です。
 近畿自動車道・長原インターから高速に入り、松原ジャンクションから西名阪道へ。連休の中日の今日、奈良方面へと向かう車は多く、本線料金所は大渋滞でした。ETCを付けていようが、料金所の遥か前からの渋滞ではどうしようもないですからね。ETC車は右端か、左から二つ目ほどのゲートへ、ということだったんで、左の方へと向かったんですが、ETC専用は右端だけでした。それもあって精神的には今ひとつ、という感じでしたが、料金所を越えてからはスムーズでした。あっという間に香芝を過ぎて奈良県入りです。天理付近で渋滞のようですが、そのまま直進。こちらはETCの効果大でスムーズに一般道へと下りました。
 
 天理教の施設が点在する中を走らせること数分、石上神宮の駐車場に到着です。ところが、駐車スペースがないんです。なぜに午前中からこんなにも…、と思えば、ある車の中から着飾った女の子とその母親が降りてきました。七五三参りなんですね。
 神社の境内にも小さな女の子や男の子の姿が多くありました。
 重文の楼門をくぐり、国宝の拝殿を眺めます。東回廊のそばにあった「七支刀(ななつさやのたち)」の写真と解説書に立ち止まり目を通します。あわよくば本物に目通りできるのではないかと思っていたんですが、甘いですね。国宝だけに神倉(ほくら)に収蔵されているそうです。
 南側にある国宝の摂社出雲建雄神社拝殿を拝して駐車場へと戻ります。
 
 これから飛鳥路へと向かうんですが、途中で三輪付近を通ります。彼女の希望は「三輪で本場のそうめんを食べること」なんですね。でも、このまま向かうと昼には少し早すぎるんで、寄り道をすることに。寄り道の場所は三輪をいくらか通り過ぎたところにある聖林寺です。
 多武峰への途中にある聖林寺には、フェノロサを感激させたと言わしめる十一面観世音菩薩像があります。天平時代の木心乾漆像で、日本仏教彫刻最高の作とも言われる仏像をぜひ見てみたい、とやってきたんです。が、まず対面するのは丈六の本尊、子安延命地蔵菩薩。石造の大石仏にあっけにとられる気分です。「これが目的じゃないんだ…」という感じで。それもそのはず、名前の通り女人安産・子授けの祈願本尊ですから。彼女と二人並んで訪れたんで誤解されてるんでしょうね。でも、順序が違います(笑)
 
 階段を上った所にひっそりと安置されているのが目的の十一面観世音菩薩です。
 しかし、このスタイルの良さは何なんでしょうね。顔立ちといい身体全体のバランスといい、最高です。と、まぁいつものように美術品鑑賞のように右から左から眺めていると、いきなり一組の家族が父親を中心として観世音菩薩を前に、お経を唱え始めたんです。しかもそらで。これが本来の仏像の拝み方なのかもしれないですけどね。
 僕ら2人は仏像を眺めることで畏敬するという発想ですから、人それぞれ、でしょう。
 
 しばし観世音菩薩のお姿に心を奪われた後、聖林寺を後にしました。もちろん、買いましたよ。観世音菩薩の写真…(笑)
 
 桜井方面へと戻り、近鉄線とJR線を越えて三輪明神の近くへとやってきました。駐車場に車を止め神社に向かって歩きます。近くにある山の名前もそうめんの名前も「三輪」なんですが、神社は「大神神社」と書いて「おおみわじんじゃ」なんですよね。
 といっても神社に参拝しに来たんではないんです。神社の参道脇にある「森正」を訪れました。こちらでそうめんを頂きます。
 彼女の希望通り、にゅうめんを注文します。
 
 運ばれてきたにゅうめんは、お出しが美味しいこともあるんでしょうが、喉越しもよくつるつるとお腹に収まります。上に添えられた具も豊富で、きのこのシャキシャキ感も良かったですね。これから寒い時期にかけて、ますます美味しく感じるんじゃないでしょうか。
 
 念願のそうめんを食した後は飛鳥の地を訪れます。
 まずは飛鳥寺。寺のそばにある駐車場に車を停めます。駐車場にレンタサイクルが何十台も停められているのは飛鳥ならではでしょうか。このあたりの観光はレンタサイクルが便利なんだそうです。
 ともかくも、まずは境内へ。中金堂は…、恐ろしい人の数です。ちょうど大型の観光バスが到着したようで、大挙してやって来ました。「待つ?入る?」と彼女に確認したものの、待っても観光客が途切れることもなさそうですし、流れに任せて中へ。
 そこで目にしたものは…。本尊飛鳥大仏(釈迦如来像)、鞍作止利仏師作の日本最古の仏像です。顔も身体も痩せているように見えるのは、以後の大仏がふっくらとされているので、それとの対比のせいでしょうかね。東大寺の大仏よりも150年も古いそうです。
 それにしても妙です。大仏にカメラのフラッシュが炸裂してます。今回の旅行中でここだけでしたね。写真撮影が解禁されていたのは。他はフラッシュはもちろん、撮影そのものもご法度です。
 
 蘇我馬子が造営した姿を維持していれば大きな敷地を持つ寺だったんでしょうが、今は昔。当時と比ぶればわずかばかりの敷地と建物を残すのみです。諸行無常を感じつつ寺内を一巡し、寺のそばにある蘇我入鹿の首塚へ。
 石を積み上げて作られた塔には、入鹿の首が葬られているそうです。
 
 飛鳥寺の前に戻り、お土産を購入。買ったのは「飛鳥の蘇」と呼ばれるもの。牛乳を何時間もかけて煮詰めた古代のチーズです。耳にしたことはあるものの、味わったことはないので買ってみました。もっとも、買ってはみたものの、すぐに食べるわけではなく、帰宅後に食べるつもりです。
 
 飛鳥寺から程近い奈良県立万葉文化館に足を伸ばします。
 ここにやってきたのは万葉文化館特別展を見るため。今日のサブテーマ通り、というか、これがあるからサブテーマが付いたのか、『今に蘇る飛鳥時代「漫画家 山岸涼子・里中満智子作品展」〜日本を生んだ時代の主役たち〜』というのを明日11月3日までやってるんです。『日出処の天子』にはまった彼女が楽しみにしてたイベントでもあります。もちろん僕も楽しみでしたよ。漫画家の原画が見られるというんですから。
 さっそく場内へ。
 なるほど、確かにイラストがいっぱいで楽しめました。でも、原画とはいってもほとんどの絵が「原画のコピー」です。本物の原画はほんの数枚だったでしょうか。里中満智子さんの方は本物の原画も比較的たくさんあったんですけどね。
 読んだ漫画のシーンを回想しながらイラストをしばし鑑賞しました。
 
 万葉文化館を出て、歩いて飛鳥寺へと戻ります。
 キャバリエに乗り込んで、次に向かったのが岡寺です。
 飛鳥寺からの距離はそれほど遠くないんですが、岡寺の駐車場で降りてからの歩く距離が意外と長いんです。彼女は数年前の奈良観光で訪れたことがあるそうなんですが、その時はレンタサイクルで前まで来たものの階段が大変そうで諦めたんだとか。山門近くに駐車場があって、そこまで車で行けるんじゃないの?という若干の期待も報われず、二人して山道の階段を昇ります。
 西国三十三観音札所参りの第7番札所ということもあってか、白装束の巡礼者の姿も見えます。そんな中をラフな格好で昇るわけですから、参拝の「重み」が違います(宗教的な意味合いは皆無に近いですから…)。
 
 本堂に入れば、目の前に大きな塑像の如意輪観音坐像(重文)が見えます。圧倒されるほどの観音菩薩を前に、正座をしてしばらく眺めてました。有名な寺だと言うこともあるんですが、引っ切り無しに、観音様を拝む参拝者が入れ替わります。ゆっくりと姿を眺めるのは、僕たちのような「仏像を見る」のを目的とした観光客だけですから、面白いもんです。信心深い人ほど、直視する時間が短いようですし…。
 
 如意輪観音のそばを離れ、本堂の中を歩きます。釈迦涅槃像等の仏像がガラスのショーケースに収められています。展示室ですね。その中で僕が最も気になったのは半跏思惟の伝如意輪観音です。サイズはかなり小さいんですが、しばらく眺めてました。彼女曰くは半跏思惟なら明日訪問予定の中宮寺のが良い、と。その期待を胸に岡寺を後にしました。
 
 岡寺から走ること数分で石舞台古墳に到着です。ここも観光地としてはあまりにも有名なところでしょう。とは言うものの、僕が以前に訪れたのは、もう20年以上前になるんじゃないでしょうか。その頃は日本の歴史も詳しくなかったですし、飛鳥と言う地に然したる興味もなかったので、石舞台というのは昔の豪族の墓、という認識でしかなかったと思います。もっと言えば、「あぁ、大きな石だなぁ」という程度だったかも知れませんね。
 間近で見るためにいくらかの入場料を支払って近付きます。確かに、今見ても「大きな石だなぁ」とは思います。しかし、今回一番驚いたのは、その石舞台の中に入れる、ってことです。同じ古墳でも、仁徳天皇陵をはじめとする皇族の古墳は宮内庁によって厳重に監視されてますが、いまや石が残るのみとなった蘇我馬子の(といわれる)墓は、何もないからではあるんでしょうが、観光客によって無造作に踏み尽くされてます。
 
 公園の周りを軽く一周してキャバリエに戻りました。
 夕方の5時を過ぎて暗くなりつつあります。街中にある亀石や猿石を見に行っても良いんですが、甘樫丘が気になって向かってみます。空き地があったので車を停めると、おばさんが嬉しそうな顔で
「くるま、停めるの?」
 と。見上げれば有料駐車場の文字が…。お金を払ってまで見てもなぁ、と、
「いえ、すぐ出ます…」
 
「じゃぁ、夜景を見に行こう」
 と、山を目指します。夜景を見るために有料道路を走るのも何なんで、桜井から王寺を経由し、平群(へぐり)から八尾へと抜ける途中にある十三峠を目標に走ります。桜井付近で渋滞にはまり、平群からの山道でクネクネと揺られ、ようやく辿り着いた十三峠は、河内平野に広がる街の明かりがきらきらと輝いてました。真下に見えるのは八尾市ですね。東大阪市は右手に見えます。奥は大阪市のはず。
「で、どこを見ればいいの?」
 あぁ、そんな突っ込みを…。
 これといったメジャーなところは見えなさそうですね。海に浮かぶ橋なんかが見えればロマンチックなのかもしれませんが、しょせん生活臭の漂う河内平野ですから…(笑)
 
 信貴生駒スカイラインを走って生駒山頂から眺めた方が良かったかな?なんて一人で思いながら、山を下りました。東大阪市もすぐそばです。


11月 3日() 走行距離 131.1km 総走行距離 67294.8km
 今日は奈良の古寺巡り最終日、斑鳩路を歩きます。
 今日のサブテーマも昨日と同じ「厩戸皇子」です。で、目指すは聖徳太子が建立した世界遺産の法隆寺。僕が法隆寺を訪れたのも、もう古い話です。小学生の頃だったでしょうかね。なんとなくの記憶しかないので、今回の訪問が楽しみです。
 が…。朝からあいにくの雨模様。
 やんでくれる事を期待しながらの出発となりました。
 
 今日の予定が法隆寺と中宮寺のみということもあって、混む事が判っている西名阪道を避けて下道を走ります。外環状線を南へと下り、25号線を奈良方面へと走らせました。
 大和川に沿って王寺に近付き、法隆寺に到着したのは正午頃のこと。正面の門に近い駐車場にキャバリエを預けます。
 この2年間で、国内外を問わず、世界遺産をたくさん見てきました。記憶の新しい方から、日光の東照宮、インドネシアのボロブドゥール寺院、五箇山・白川郷の合掌造り集落、カンボジアのアンコールワット、広島の厳島神社・原爆ドーム、奈良の東大寺・薬師寺等々。そして今日、斑鳩の法隆寺。
 日本国内で最初に世界遺産に登録されたことを誇示する表現が多々あるのは、さすがに自慢好きの関西人気質なんでしょうか。
 
 というわけで、まずは南大門をくぐって記念撮影。
 それから境内を歩いて中門へと向かいます。ここから中に入れば目の前にはよく知られた五重塔が見えます。塔に近付きます。石段を上がって塔の最下層を覗いてみました。フェンス越しに、塑像群が見えます。この塑像は奈良時代に作られたということですから、もう1200年以上も前のものなんですよね。アンコールワットよりも古いんだなぁ、なんて考えていると、彼女が自分のバッグから小型のペンライトを取り出しました。スイッチオン。
 そうなんです。フェンス越しはかなり暗いんです。かなり…。というわけで、小型のペンライトで照らした先は、ほんのりと明るくなったかな?という程度でした。
 
 次に金堂へ。ここには仏像がたくさん安置されてます。聖徳太子のために造られたと言われる釈迦三尊像、父用明天皇のために造られた薬師如来座像、穴穂部間人皇后のために造られた阿弥陀如来座像。それらを守るために周囲に立つ四天王。どれもが歴史的に価値あるものです。
 で、ここでも彼女のペンライト。が…。やっぱり暗いですね。その暗い仏像がパッと明るくなったのは、修学旅行生を相手に仏像の解説をするおじさんが持っている強力な懐中電灯が光を放ったからです。それをいいことに彼女と二人で学生に混じって眺めてました。もっとも、仏像に興味を持ってた高校生って、いなかった様に見えますけどね。
 
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   大講堂に移動して薬師三尊像等を拝観した後、大宝蔵院へ。
 ここは法隆寺の所有する宝物の展示室、という感じです。数多くの宝物がガラスケースの中に収められています。この量は、さすがは日本を代表する世界遺産と納得するに足るものだと思います。
 有名なところでは、白鳳時代の夢違観音像、推古天皇御所持の仏殿と伝える飛鳥時代の玉虫厨子、蓮池の上に座る金銅阿弥陀三尊像を本尊とする橘夫人厨子等々。その他にも百万塔や、中国から伝えられた白壇造りの九面観音像、天人の描かれた金堂小壁画など、興味があれば見ていて飽きが来ません。
 先ほど訪れた金堂の天井付近にある天女の描かれた壁画は、いわゆる「本物」ではなく、模造品です。本物は大半が失われてしまっていますが、難を逃れた一部がここに展示されています。天女を描くタッチが繊細でいい感じです。
 
 その先にあるのが、彼女が楽しみにしていた百済観音堂です。
 百済観音は飛鳥時代の仏像で、わが国の仏教美術を代表する仏像として世界的に有名です。あまりにも有名ですから、フランスにも渡ったそうです。なんて聞いてたので、小さな仏像なのかと思いきや…。
 百済観音のお姿を見れるのは、まだ先です。まずは、百済観音についての予備知識がパネル等で紹介されています。このじらせ方が上手いなぁと思うんですが、それがあったからこそ、実物を見た瞬間の満足感が増すのかも知れません。
 八頭身のすらっとした姿が、この滑らかなボディラインが、指先にまで感じられる繊細さが、見る者を魅了します。
 
 正面から、左斜め前から、右斜め後ろから、いろんな角度から百済観音の姿を堪能して、百済観音堂を出ました。
 
 今日は朝から法隆寺しか訪れていないのに、既に仏像でおかないっぱいです。さすがは法隆寺ですね。
 で、まだ、法隆寺。
 東大門をくぐって土産物の屋台が建ち並ぶ参道を歩き、着いた先がご存知、夢殿です。この夢殿を拝観できるというのが、この時期に法隆寺を訪れた理由の一つでもあります。なんたって、中央の厨子にある秘仏、救世観音像を拝めるんですから。相変わらず、彼女の照らすペンライトは微妙に明るくなる程度ですので、ガイドの持つ強力な懐中電灯を待ってみました。そこは観光客の絶えない法隆寺ですから、すぐにもそのチャンス到来です。
 暗い中で明るく照らされる救世観音像。1千年近い時を布に包まれて過ごし、明治時代に岡倉天心とフェノロサによって解き放たれた観音像は、周囲の暗さもあいまって神秘的に見えました。法隆寺拝観を締めくくるに相応しい秘仏です。
 
 参道を歩き、中宮寺へ。
 奈良古寺巡り最後のお寺です。
 驚くほどに綺麗に見えた本堂は昭和43年に建立されたものだそうで、飛鳥時代の仏像が安置される場所としては少々不釣合いに感じたんですが、期待の弥勒菩薩半跏像(国宝)を見れば、そのことも忘れます。むしろ大事に守るためならコンクリート建でも止むを得ないとも…。
 それほどまでに感じる美しい顔に、彼女のお薦めの意味もよく判ります。目を閉じ「考える」この弥勒菩薩は典型的なアルカイックスマイルで、エジプトのスフィンクス、モナリザと並んで世界の三大微笑像とも呼ばれているそうです。
 美しさというか優しさというか、しばらく眺めていたくなる仏像でした。
 
 最後に当然かのように弥勒菩薩の写真を買い求め、中宮寺を後にしました。
 
 さて。精神的な満足感は味わえましたが、肉体的に空腹なので食事をしよう、ということになったんですが、時間もかなり中途半端です。だから…ということもないんですが、京都駅まで出ることにしたんです。その方が、落ち着いて夕食を取れますからね(この時点で昼食抜きが確定です)。
 
 法隆寺から京都までは、カーナビのルート通り25号線を東へと走り、24号バイパスを北へと向かいます。木津インターから京奈和道に。で、当たり前のように料金所のゲートを突っ切ろうとしたんですが…。
「あっ、無いよ。ETCのゲートが…」
 時代に逆らってますね。いや、単に付いてないだけなんですが。
 仕方なくハイウェイカードで支払いです。ETCカードでの支払いが出来たかどうかは確認してないんですが、手持ちのハイカがあったんで、まぁいいかと。
 
 京奈和道を終点の城陽インターまで走り、バイパスを走って京都市内へ。京都駅の北側に出たのが5時を少し回った頃です。
 去年の4月に利用した京都駅ビルの駐車場に停めようとビルの中へと入ったんです。
 …そこからが地獄でした。
 2階「満車」で、3階へ。3階も「満車」で4階へ。そうこうして8階まで上がると、駐車スペースが全部満車でした。どこかに一つくらいは空きがあるだろうと思ってたんですけどね。入場制限くらいして欲しいなぁ、と思っても後の祭り。
 他を探そう、と下りようと思ったんです。そしたら、下りる車が全く動かないんです。館内にかかる放送を聞けば、駐車場に面した道路が渋滞している由。
 そんなこんなで「駐車することなく」駐車場を出たのが、90分後。さすがに料金の900円は免除してもらいましたが、待機中からイライラし続けてました。暴れる馬を抑えるように彼女が「どうどうどう」と(笑)。
 
 結局、近くの平面駐車場に車を預け、「プラッツ近鉄京都(近鉄百貨店)」の中のパスタ店でディナーを頂きました。空腹は精神的にも良くなかったんでしょうね。食べ終わる頃にはすっかりリラックスしてました。
 
 その足で京都駅の新幹線ホームへ。
 彼女の乗る東京行き「のぞみ」を見送りました。
 
 およそ2時間で新横浜に着きます。一方の僕は駐車場に戻り、171号線を大阪方面へと走らせます。大阪の自宅までおよそ1時間30分。やっぱりのぞみは速いですね。なんて、キャバリエのページで絶賛しちゃマズいんでしょうけど…(笑)。
 
 3日間で奈良の古寺三昧。大阪から近いにも関わらず、あまり接する機会のなかった建物と、そこに眠る仏像の数々。たまには現代社会のしがらみを脱ぎ捨て、飛鳥や天平の時代を懐古するのも良いものですね。秘仏に出会える秋の大和路。ぜひお試しを…。

2003年10月まで